GWいかがお過ごしでしたか。私は1泊でしたが福岡旅行を楽しみました。博多グルメを堪能し、糸島の風景に癒され、太宰府にお参りし、門司レトロ、下関の魚市場と大満喫の旅でした。つくづく健康体に戻ってよかったです^^
今日は、建物賃貸借のトラブル事例とその対処法についてのまとめです。業務としては相談を受けたことはありませんが、自治体の相談会にはかなりの確率で相談に来られるとのことで、ひととおり学んでおこうというのが狙いです。
敷金をめぐるトラブル
「敷金」は、契約期間中に滞納があった場合の家賃債務や、部屋を損傷させた場合の修理費の担保として、先に預けておくお金のことです。契約が終了して部屋を退去する際、敷金の額から家賃の滞納分や借主に責任のある損傷の修理費など(賃貸借期間に生じた借主の金銭債務の額)を差し引いた金額が返ってきます。
2020年の民法改正で、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。つまり敷金とは、部屋の貸し借りの際に借主が負うことになる金銭債務(家賃の滞納など)を担保するため、借主が貸主に支払うお金、ということです。
つまり、家賃の滞納や借主が故意または過失により部屋を損傷させた場合でなければ、基本的には敷金は戻ってくることになります。
ところが、中には「修繕費」「原状回復費」の名目で本来借主が負担しなくて良いはずのリフォーム代も差し引かれてしまうケースもあるようです。賃貸借契約の終了時、敷金を精算する際には気をつけて確認するようにしましょう。
「修繕費」と「原状回復費」の違いは、前者は賃貸中に発生した費用、後者は賃貸終了後に発生する費用と考えておけばよいです。
修繕義務の範囲
原則として、賃貸物の使用および収益に必要な修繕義務は賃貸人が負います。屋根、柱、壁等の主要な構成部分はもちろん、エアコン、給湯器、トイレ、キッチンなどの設備の修理費用は貸主が負担しなければなりません。
例外として、修繕義務を借主に負わせる旨の特約がある場合があります。このような特約は小規模の修繕であれば有効ですが、大規模な修繕について借主に負わせる特約はその部分において無効と解されます。
小規模の修繕の範囲ですが、例えば電球が切れた際の交換、畳や網戸が擦り切れた場合の修繕、パッキンの劣化による交換、などです。このような場合には借主が自身で修繕を行ってもよいし、修繕が必要なければそのままにしておけばよい、ということになります。
また、借主が故意または過失により損傷を与えた場合は、借主の修繕義務が生じます。賃貸借契約に基づく義務、というより損害賠償の意味合いとしての義務ですね。
例えば、壁に釘を打ちつけて大きな穴を開けたとか、エアコンの水漏れを放置したことによりカビが発生したとか、床の汚れをそのままにしてシミが取れなくなったというケースです。タバコによるヤニ汚れ、ペット飼育によるキズ・臭いも同様です。こちらは、建物の退去後に原状回復費として請求される可能性があります。
原状回復義務の範囲
原状回復義務とは、賃貸借契約が終了した際、目的物件を原状に復して返還する義務のことをいいます。つまり、借主は部屋を元どおりにして返さなければならない、ということです。
元どおりがどこまでなのかですが、新品のものに買い替える必要などありません。通常使用による経年劣化は当然のこととして借主が負担するものではなく、貸主が負担すべきことです。
改正後の民法では、原状回復義務の範囲について、通常の使用によって生じた損傷(家具の設置による床・カーペットのへこみや設置跡、テレビ・冷蔵庫等の電気ヤケ、破損・鍵紛失のない場合の鍵の取り替え等)については原状回復義務を負わないことが明記されました。
例えばフローリングでは通常のものであれば6年〜8年で減価償却となります。6年以上住み続けた場合には、原状回復費として請求されることはないでしょう。6年未満の場合の費用負担割合については国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)に基づいて決められます。
フローリングや壁の傷がもともとあった場合には、借主は当然に修繕義務を負いませんが、もともとあったものなのか、賃貸中に生じてしまったものなのかがあやふやになることを避けるために、入居前に傷や汚れを確認したら写真などで記録し、仲介業者または貸主へ報告しておくべきです。
敷金の返還請求
返還されるべき敷金がなかなか返ってこない、という場合には敷金返還請求を行います。
記録を残すためにも内容証明郵便によって書面で請求します。原状回復費用の支払い義務がないこと、一定期間内に指定の口座へ振り込むこと、履行されなければ裁判上の手続きをとることなどを記載します。
話し合いにより解決できそうなら、さらに交渉したり、調停や国民生活センターによるADR(裁判外紛争解決手続)を利用するのもひとつです。
逆に、全く返還に応じないようであれば、敷金返還請求訴訟を提起せざるを得ません。60万円以下の少額であれば、少額訴訟手続きが可能です。原則として1日で審理を終え、即日判決がもらえます。