任意整理とは当事者間の話し合い

債務整理

裁判所が関与しないのが最大のメリット

債務整理に共通する過払金返還、時効の援用、情報開示についてご説明しましたが、ここからは4種類ある手法をそれぞれ見ていきます。

債務整理の手法の一つである任意整理とは、裁判所などの公的機関を利用せず、業者と直接交渉して債務の支払方法について合意を目指す方法です。

具体的な手段としては、まず既に支払った利息を利息制限法により引き直し(再計算)、過払金があれば回収し、場合により和解案の策定をしたり、あるいは債権額の減額交渉をしていきます。

大きなメリットとしては、裁判所が関与しないため債務名義化しない、ということです。債務名義とは、借金の返済が滞った場合に、法的に強制執行を行うための基礎となるものです。つまり、債務名義化すると、不動産や預貯金などの財産に対して裁判所や執行官によって強制執行が行われ財産を失ってしまう、ということです。任意整理はあくまで債権者と債務者の間で借金について話し合いの上、返済方法などについて解決を図るものであり、他の財産にまで影響は及ばない、ということになります。

民事再生や破産との違いは、返済の見込みがあるかどうか、です。任意整理は前提として、債務者に継続的な収入があり、返済の見込みがある方が対象となります。

具体的な弁済計画とは

では、どのような弁済計画を立てていくのでしょうか。

まずは、利息制限法による引き直し計算をし、過払金を回収した後、債務が残っていれば和解案を策定します。収入から家賃、学費、食費などの支出を差し引いて月々の弁済可能額を算出し、支払総額、支払回数、支払期日についての和解案を提示します。

多くは毎月の返済額を5000円以上とし、3年〜5年以内に完済できる分割払いになるようです。その後、債権者との詳細な和解内容についての交渉を経て和解書の作成となります。

再度の滞納時には期限の利益を喪失する

金融業者の側から、滞納によって期限の利益を失う(期限の利益喪失)という内容が和解書に盛り込まれるのが一般的です。期限の利益喪失とは、わかりやすく言うと、債務者の分割払いが認められなくなることを意味します。

任意整理の和解後、債務者は金融業者に対して返済を再開しますが、通常は2回の滞納によって期限の利益を失い、金融業者から一括返済の請求を受けることになります。

期限の利益を喪失すると、遅延損害金が発生します。期限喪失日の翌日から一括返済するまでの期間、日割りで延滞損害金を支払うことになります。通常は利息よりも遅延損害金の方が金利が高いので、一括返済を請求された後、完済までの期間が長くなればなるほど、1日ごとに返済負担は重くなります。そのため任意整理後は滞納しないですむように、返済に無理のない計画を立てて和解をすることが重要です。

期限の利益を失った後にまた分割払いに戻したい場合は、金融業者に対して再度、任意整理の再和解を行う必要があります。ただし、任意整理の再和解は、金融業者の態度が厳しくなることが通常です。 一度目の任意整理で譲歩して合意した内容を、債務者の滞納によって破られたことになるので、条件的に難航する可能性が高くなります。

専門家に返済状況を管理してもらう

任意整理で和解したあと、債務者は金融業者に対して、次の返済方法で支払いを続けることになります。

  • 任意整理してもらった専門家の事務所に代行してもらう
  • 債務者本人が金融業者の口座に直接振り込む

どちらの返済方法になるかは、専門家の事務所によって異なります。

専門家の事務所に返済を代行してもらう場合は、もし支払いを滞納してしまった場合の金融業者からの連絡先は専門家宛になります。債務者本人が直接、金融業者の口座に振り込んでいる場合も、専門家の事務所に連絡がいくようにすることが可能です。
金融業者との直接の連絡は避けたい人などは、専門家への相談の際に確認しておくといいでしょう。

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