不動産を売却した場合の譲渡所得税

ツナグ相続

今まで相続を中心にお話してきましたが、少し目線を変えて、不動産を処分したときにかかる税金をテーマに取り上げます。

いらない不動産を処分する方法としては、放棄・寄付・売却・活用(信託)などが考えられます。放棄、寄付・活用(信託)についてはすでにお話しましたので、今回は売却について考えます。

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。ただし、事業用の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。

所得額、税額の計算方法

まず、譲渡所得の金額を次のように計算します。以下、国税庁HPより引用していきます。

収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

次に、譲渡所得の税額を次のように計算します。土地や建物の譲渡による所得は、他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して計算する分離課税制度が採用されています。

(1) 長期譲渡所得 課税長期譲渡所得金額×15%

(2) 短期譲渡所得 課税短期譲渡所得金額×30%

長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、また、短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物をそれぞれ譲渡したことによる所得をいいます。

譲渡所得税は、不動産売却の売却金額ではなく、売却によって得た利益に対してかかる税金です。

取得費は、売却した不動産を取得したときにかかった購入代金などの費用です。
譲渡費用は、不動産の売却時に支払った費用のことです。大まかに言えば、売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いて、残った売却利益に対して税金がかかるイメージです。

譲渡所得に大きく関わってくる取得費と譲渡費用について、詳しく見ていくことにします。

取得費は土地と建物に分けて計算する

取得費で主な費用となるのは、売却した不動産の購入代金です。建物を新築した場合には、建物建築請負代金がそれに当たります。
上記のほか取得費に含まれる主なものは次のとおりです。ただし、事業所得などの必要経費に算入されたものは含まれません。

  • 土地や建物を購入(贈与、相続または遺贈による取得も含みます。)したときに納めた登録免許税(登記費用も含みます。)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税(なお、業務の用に供される資産の場合には、これらの税金は取得費に含まれません。)
  • 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
  • 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
  • 土地の取得に際して支払った土地の測量費
  • 所有権などを確保するために要した訴訟費用(これは、例えば所有者について争いのある土地を購入した後、紛争を解決して土地を自分のものにした場合に、それまでにかかった訴訟費用のことをいいます。なお、相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は、取得費になりません。)
  • 建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
  • 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
  • 既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金


売却した不動産の購入代金は、土地と建物に分けて計算します。
土地については購入額でよいのですが、建物については購入額から減価償却費(取得から売却時までの間に経年劣化した価値)を控除します。

建物の取得費の計算式

建物取得費 = 建物購入価額 - 減価償却費相当額

減価償却費は以下の計算式で算出します。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

注意しなければならないのは、償却率は建物の構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)によって数値が定められていることです。また、業務用と非業務用で償却率が異なります。

また、経過年数は建物の築年数ではなく、建物を購入してから売却するまでの所有期間を指します。経過年数を計算する際に端数月がある場合は、6ヶ月以上であれば1年として計算し、6ヶ月未満の端数付きは切り捨てます。

譲渡費用に含まれるもの

譲渡費用の主なものは次のとおりです。

  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金(これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです。)
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。

したがって、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用になりません。

特別控除の特例を理解する

土地や建物を売ったときの譲渡所得の金額の計算上、特例として特別控除が受けられる場合があります。特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されます。

土地や建物を譲渡した場合の特別控除額は次のようになっています。

  • 公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
  • マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例(被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の特別控除の特例)
  • 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
  • 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
  • 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
  • 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
  • 低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例

上記にあげた特別控除のうち、2番目に記載したものを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。いわゆる”マイホーム特例”です。適用場面が多いのですが、細かく規定がありますので次回に詳しく説明します。

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