気持ちの良いお天気、絶好のガーデニング日和ですね。今日は伸びすぎた多肉植物の手入れとジャスミンのリースを作りました。モッコウバラも満開です。運動をしない私にとって、身体を動かすのには庭仕事がもってこいです。
今日は自筆証書遺言保管制度についてのお話です。
まさに今、私はこの制度の壁にぶち当たっています。どういうことなのか、詳しく解説します。
そもそも自筆証書遺言書保管制度とは、最近新設された制度です。自筆証書遺言でありながら検認不要であること、データ保管できることなどがメリットとして挙げられ、法務局も推奨しています。こちらで概要についてご紹介しています。
ところが、意外な落とし穴がありました。
遺言書に基づいて、登記や銀行の相続(あるいは遺贈)手続きを行うときには、遺言書情報証明書の取得が必要となります。この証明書は、遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(又は国籍等)に加え、目録を含む遺言書の画像情報が表示され、遺言書の内容の証明書となるものです。
従前は遺言書の原本を使用して行っていた手続について、その代わりに添付して使うことができる、というものです。
厳格な遺言書情報証明書の交付請求
遺言書情報証明書を取得するために法務局へ交付請求をするわけですが、この際の条件が非常に厳格なのです。
まず、交付請求できるのが次の方に限定されています。
つまり、遺言執行者として指定されていない限り、司法書士などが代理人として請求することができません。
交付請求は、全国どこの遺言書保管所=法務局でも手続可能、とありますが法務局ならどこでも、というわけではありません。地方法務局の本局または支局に限られます(出張所はNG)。
また、郵送又は来庁のいずれかの方法で行うことができますが、来庁の場合には予約を取る必要があります。
そして最大の難関、添付書面の多さです。
- 遺言書情報証明書の交付請求書(1通あたり1,400円分の収入印紙を貼付)
- 法定相続情報一覧図の写し
- 顔写真付公的身分証明書(窓口で受け取る場合)
- 請求人の住所氏名を記した返信用封筒(切手貼付)(郵送で受け取る場合)
- 請求人の住民票(受遺者・遺言執行者が請求人である場合)
- 法人の登記事項証明書(法人が請求人である場合)
- 戸籍謄本(親権者の場合)
- 登記事項証明書(後見人等の場合)
法定相続情報一覧図がない場合は、次に挙げるすべての書類を揃えて提出することが必要になります。※関係遺言書保管通知がある場合には省略できます
- 遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 遺言者に配偶者または子がいない場合:遺言者の父母、および兄弟姉妹が亡くなっている時は出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- すべての相続人の戸籍謄本
- すべての相続人の住民票(戸籍の附票でもOK)
戸籍謄本を揃えるのは相続人を確定させるためです。また、相続人または受贈者が遺言書情報証明書の交付を受けると、遺言書保管官はすべての相続人等に対して関係する遺言書を保管している旨を通知するので、そのために相続人全員の住民票が必要なのだと思われます。
遺言書の内容が相続人への相続であれば、いずれ必要となってくる書類ですから話はわかります。問題は、遺言書の内容が第三者への遺贈であっても同じ添付書面が必要になるということです。
遺贈の場合でも相続人すべての戸籍謄本が必要
遺言者が第三者へ遺贈したい背景としては、配偶者や子どもがいない、相続人がいたとしても疎遠である、身近でお世話になった方へ財産を遺したい、などという場面が想像できます。
つまり、遺贈される側=受贈者は遺贈者の相続人とは面識もなく、親族関係にもない場合が多いでしょう。それなのに、これだけの戸籍を集めることは事実上不可能なのです。(戸籍は個人情報の観点から直系親族でないと交付請求できません)
また、戸籍がすべて揃えばよいのですが、中にはどうしても揃わないケースもあります。登記ならば、権利証や固定資産税の納税通知書など他の書面で被相続人の同一性を証することができるのですが、遺言書情報証明書の交付においては「戸籍」と限定されてしまっています。(法務局における遺言書の保管等に関する省令第34条)
これでは、受贈者にとって八方塞がりになりかねません。遺贈者としても、確実に受贈者に遺贈したいという思いがあるからこそ保管制度を利用したのでしょうが、逆に受贈者に大きな手間と苦労をかけてしまうことになってしまうことになります。ここに大きな制度の矛盾を感じます。
まさにこのような事態に遭遇した受贈者の方が、ご自身ではどうすることもできず、弊事務所へご相談にいらしたのでした。結果として、私どもが作成した「上申書」での対応となりそうです。
これから自筆証書遺言保管制度を利用しようと思われている方、事前に法務局へしっかりと確認された方がよいでしょう。そして、どうしてもご自身で解決できない場合には専門家へご相談されてください。