前回相続税のお話をしましたが、もう一点、大事なポイントがあるのでお伝えします。
それは、相続税の申告には期限があるということです。
相続税の申告期限は相続日の翌日から 10 ヵ月以内
相続税の申告期限は、相続日(被相続人が亡くなった日)の翌日から 10 ヵ月以内です。
亡くなった方の住所地を所轄する税務署に相続税の申告書を提出するとともに、納付税額が算出される場合、この期間内に納税する必要があります。
相続税の申告・納税義務があるにもかかわらず、期限までに相続税の申告・納税を行わなかった場合、延滞税、無申告加算税、重加算税が課される可能性があります。
延滞税は、期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される利息のようなものです。納付期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは年7.3%、それ以後は14.6%の割合で課されます。
無申告加算税は、期限までに申告していない場合に課されるペナルティです。納付すべき税額の5%~30%の額が課されます。
相続税の申告・納税期限は原則として延長されません。
相続人の間で遺産分割協議が終わっていない場合なども例外ではないため、注意しましょう。
このような場合、民法が規定する相続分などに従って「相続をしたもの」とみなして相続税を計算したうえで、申告・納税が必要です。
その後、遺産分割が行われた場合には、修正申告や更正の請求をして、実際に分割した財産額に基づくものに修正します。
なお、災害などのやむを得ない事情がある場合には、税務署に申請することで延長が認められることがあります。ただしその場合も、やむを得ない事情がなくなってから2ヵ月以内に相続税の申告が必要です。
登記費用は経費に計上できる
ところで、相続登記をおこなう際には、登録免許税や書類の取得費用などが発生します。
これらの費用は、確定申告時に経費として計上できます。
経費に含めることで支払う税金が少なくなるため、確定申告時は忘れずに計上しましょう。
相続登記にかかる費用において、経費に計上できるものは以下の3つです。
- 登録免許税
- 書類の取得費用
- 司法書士費用
登録免許税
登録免許税とは、相続登記をする際に法務局に支払う税金です。
税額は、相続する不動産の金額(固定資産税評価額)に0.4%を掛けて求めます。
たとえば、固定資産税評価額が4,000万円の場合、登録免許税は「4,000万円×0.4%=16万円」です。
書類の取得費用
相続登記をおこなう際は、固定資産評価証明書や戸籍謄本などさまざまな書類が必要になります。
固定資産評価証明書は300円~400円程度、戸籍謄本は1通450円で取得できます。
戸籍は、原則として被相続人の出生から死亡までの分を取得しなければなりません。除籍謄本や改製原戸籍謄本なども必要となり、こちらは1通750円です。そのほかにも、被相続人の住民票の除票や、不動産を取得する方の住民票なども必要になります。これらの書類を取得する際にかかった費用も経費に含まれるため、申告時は忘れずに計上しましょう。
司法書士費用
相続登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う報酬も必要です。
報酬は司法書士事務所ごとで異なりますが、相場は。
上記すべて、登記費用の領収証に記載されているはずですから、大切に保管し、申告の際に忘れずに提出しましょう。
ところで、葬儀費用や係争費用は、基本的に家事費として扱われるため、経費には算入できません。
代償分割の費用についても、所得税基本通達38-7において「代償金は経費に算入されない」と明記されてます。
相続登記費用が経費として認められるのは、不動産の取得や利益に直接関係があるためです。
不動産の取得や利益に直接関係しない費用は、経費として認められません。
特例や控除の適用には条件がある
前回触れた「小規模宅地等の特例」および「配偶者に対する税額軽減」の適用は、相続税の申告期限までに遺産が分割されていることと、相続税申告書を期限内に提出することが条件になっています。
適用の結果、納付する税額がないことになっても、相続税申告書を提出する必要があります。
なお、相続税の申告期限までに遺産分割が決まらない場合であっても、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、3年以内に分割された場合には、さかのぼってこれらの適用を受けることができます。
このように、期限後に申告する場合、利用できなくなる特例や控除があるため注意が必要です。
申告手続きの流れ
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません。
相続税の申告書は、e-Tax(電子申告)で提出(送信)する方法のほか、郵便や信書便による送付または税務署の時間外収受箱へ投函する方法により提出することができます。
また、申告には各種書類の収集、提出が必要ですが、相続登記あるいは預貯金等の相続手続きに際して必要な書類をほぼ再利用できます。ですので手続きの流れとしては、まず不動産、預貯金の相続手続きを済ませてから、相続税の申告をすることです。司法書士は大概税理士とも連携していますから、相続手続きが終わった段階で、税理士を紹介してもらうとスムーズでしょう。