11月に入ってやっと秋らしい気候になってきましたね。写真は昨年のこの時期に撮った立教大学のキャンパスです。紅葉と趣ある煉瓦造りの建物のコラボがとても素敵な光景でした。
さて、今回は「相続物件の特定」をテーマにしてみます。
司法書士の受験中も、研修中も、実務においても、「登記において最も重要なのが『人、物、意思の確認』である」と口を酸っぱくして言われます。相続登記に置き換えると、『相続人、相続物件、相続させる(受ける)意思の確認』ということになります。(但し、相続とは『意思』には関係なく被相続人の地位を包括的に承継することなので、『意思』が問題になる場面は限定的です。)
相続物件とは、文字どおり相続する物件のことですが、意外と落とし穴があります。
マンションの場合、敷地権や共有地に注意
- 川崎市麻生区上麻生○丁目236番4
- 川崎市麻生区上麻生○丁目236番5
- 川崎市麻生区上麻生○丁目772番11
- 川崎市麻生区上麻生○丁目866番6
- 川崎市麻生区上麻生○丁目888番8
- 川崎市麻生区上麻生○丁目1960番2
- 川崎市麻生区下麻生○丁目765番1
- 川崎市麻生区下麻生○丁目765番3
- 川崎市麻生区下麻生○丁目770番1
- 川崎市麻生区下麻生○丁目770番7
- 川崎市麻生区下麻生○丁目854番
- 川崎市麻生区下麻生○丁目861番2
- 川崎市麻生区下麻生○丁目861番5
- 川崎市麻生区下麻生○丁目861番7
- 川崎市麻生区下麻生○丁目921番1
- 川崎市麻生区下麻生○丁目921番4
- 川崎市麻生区下麻生○丁目921番5
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番3
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番5
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番10
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番11
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番1
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番6
- 川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番地6 家屋番号川崎市麻生区王禅寺西○丁目1960番6の○の区分建物
このリスト、何だかお分かりでしょうか。
川崎市内に実在する、とあるマンションの建物+敷地権の土地です。物件数にして24もあります。敷地権とは、区分所有建物である一棟の建物の敷地に関する権利をいいますが、居住者全員で持分を持っていることがほとんどです。ですので、こちらのマンションの一室を所有していた方が亡くなった場合、占有部分のみならず、24の敷地権も相続することになります。
登録免許税も原則としてそれぞれの敷地権に対してかかります。さらに、持分割合が異なる場合には、相続登記も何回かに分けて行うことが一般的ですので、その分登記費用が割高になります。
マンションによっては、敷地権ではなく共有の土地の場合もあります。敷地権は土地と建物が一体化して登記されている権利形態ですが、それとは異なり、土地の所有権と建物の所有権が別々となっている状態です。建物の登記と、共有の土地の登記が別々に分かれているので見落としやすく、さらに注意が必要です。
また、集会所や管理人室、ポンプ室、ゴミ置き場などの共有部分についても注意が必要です。これらには2パターンあります。
- 規約共用部分となっている場合
- 区分所有者全員がそれぞれの持分割合で共有している場合
❶の場合には共用部分の持分は専有部分の処分に従い、原則として共有者は専有部分と分離して共用部分の持分を処分できません。そのため、権利の登記はされず、専有部分の移転登記さえすれば、共用部分の持分については相続登記の必要はありません。ただし、登録免許税の計算には含めなくてはなりません。
注意が必要なのは❷の場合です。専有部分とは別の建物として登記されていますので、共有持分の相続登記が必要になります。個別の相続登記が必要ということは、遺産分割協議の対象にもなりますし、遺言書にも記載が必要になるのです。これらを見落とさないためには、後ほど説明する固定資産税の納税通知書や名寄帳で注意深くチェックする必要があります。
納税通知書に記載されない物件もある
ご自身の所有されている不動産の所在は、春先に役所から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されていますので、基本的にはそちらを確認すればよいのですが、これにも落とし穴があります。
固定資産税の評価額が低い場合や、「公共の用に供する道路」である私道の場合、固定資産税が課税されず、納税通知書が送られてこない、または納税通知書に記載されないのです。固定資産税が非課税だからといって、登録免許税が非課税とはなりません。ですので、非課税の土地や私道持分があるかどうかを確認することは、とても大事な作業になります。
固定資産税が非課税とされる土地や私道持分、また非課税のマンション共用部部分などについては、「名寄帳」を市町村から入手することで確認することができます。「名寄帳」とは、ある人が所有する不動産の一覧表のことで、固定資産税が非課税とされている不動産も確認することができます。ただし、市区町村ごとに作成されますので、複数の市区町村にわたって不動産を所有している場合には、それぞれの市区町村に請求する必要があります。
物件の把握には名寄せ帳が有効
物件を把握しにくい場合として、先祖代々受け継いでいる土地が何筆もある場合があるでしょう。物件は地方にありながら相続人は都市に居住していることが多く、なかなか行く機会もなく現況も把握しづらいなかで、相続登記をすることになります。
相続登記をすることなく長年放置されている土地も多く、祖父、曽祖父と何代も遡って調査していくことになります。
1970~1980年代にかけて、主に北海道などで行われた原野商法で土地を買われた方が亡くなり、子が相続するケースも増えています。原野商法でなくとも、バブル期にリゾート物件に不動産投資をしたものの売るに売れず、相続せざるを得ないケースもあるようです。
このようなケースにも「名寄帳」は不可欠です。所有者本人、または相続人であれば請求できます。相続人以外にも、委任状があれば代理人も名寄帳を請求できるため、必要に応じて司法書士に依頼するとよいでしょう。相続人から請求する場合、被相続人の死亡の事実を確認できる書類、申請者が相続人であることがわかる書類が必要になります。
物件の漏れがあると、いずれまた相続登記が必要となり二度手間になりますし、4月から施行された相続登記義務化により過料が科される可能性がありますので、気をつけたいところです。