消費者問題②クーリング・オフ制度

司法書士のリアル

クーリング・オフ制度は、訪問販売など一定の取引について、消費者が契約した後に冷静に考え直す時間を与え、一定の期間内であれば、一方的に無条件で契約を解除できる制度です。

店舗での買い物や、営業所での契約は適用されません。事業者からの不意打ちな勧誘があることが条件になります。

その他、次の場合には適用されないので注意が必要です。

  • 契約書面を受け取ってから8日経過した取引
  • 特定商取引に関する法律の対象となる6種類以外の取引方法
  • 3,000円未満の現金取引

規制の対象となる6種類の取引方法

特定商取引に関する法律では規制の対象となる6種類の取引方法が定められています。具体的にみていきます。

  1. 訪問販売
    • 消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。そのほか、喫茶店や路上での販売、またホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間、施設等からみて、店舗に類似するものとは認められないものも訪問販売に該当します。
    • 営業所等で締結された契約であっても、路上等営業所以外の場所で消費者を呼び止めて営業所等に同行させて契約を締結させる場合(いわゆるキャッチセールス)や、電話や郵便、SNS等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、「あなたは特別に選ばれました」等、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って営業所等に呼び出したりして契約を締結させる場合(いわゆるアポイントメントセールス)がそれに当たります。
    • 8日以内であればクーリング・オフができます。
  1. 通信販売
    • 新聞や雑誌、テレビ、インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイトを含む)などによる広告や、ダイレクトメール、チラシ等を見た消費者が、郵便や電話、ファクシミリ、インターネット等で購入の申込みを行う取引方法をいいます(ただし、「電話勧誘販売」に該当する場合は除きます。)。
    • 通信販売には、クーリング・オフ制度はありません。返品については事業者が決めた特約(返品特約)に従うことになりますので、事前に返品の可否や返品・交換が可能な場合の条件などをよく確認することが大切です。
    • 返品特約が定められていない場合、8日以内であればクーリング・オフができます。
  1. 電話勧誘販売
    • 事業者が電話をかけて勧誘を行い、その電話の中で消費者からの契約の申込みを受けた(又は契約の締結をした)場合だけでなく、電話を一旦切った後、郵便、電話等によって消費者が申込みを行った場合でも該当します。
    • 当該契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに電話をかけること、他の者に比して著しく有利な条件で契約を締結できることを告げ、電話をかけることも含みます。
    • 8日以内であればクーリング・オフができます。
  1. 連鎖販売取引
    • 「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」(いわゆるマルチ商法)などと言って人々を勧誘し(このような利益を「特定利益」といいます)、取引を行うための条件として、1円以上の負担をさせる(この負担を「特定負担」といいます。)場合に該当します。
      実態はもっと複雑で多様な契約形態をとっているものも多くありますが、入会金、保証金、サンプル商品、商品などの名目を問わず、取引を行うために何らかの金銭負担があるものは全て該当します。
    • 似て非なるものとして、金品を出す加入者が無限に増加する「ネズミ講(無限連鎖講)」は、法律により禁止されています。
    • 20日以内であればクーリング・オフができます。
  1. 特定継続的役務提供
    • 一定期間を超える期間にわたり、一定金額を超える対価を受け取って提供することを意味します。これには役務提供を受ける権利の販売も含まれ、「特定権利販売」と呼ばれます。上記要件に該当すれば、店頭契約も規制対象となります。
    • 次の7役務が特定継続的役務として指定されています。 ただし、5万円を超えるものに限ります。
      • いわゆるエステティック(1ヶ月を超えるもの)
        いわゆる美容医療(1ヶ月を超えるもの)
        いわゆる語学教室(2ヶ月を超えるもの)
        いわゆる家庭教師(2ヶ月を超えるもの)
        いわゆる学習塾(2ヶ月を超えるもの)
        いわゆるパソコン教室(2ヶ月を超えるもの)
        いわゆる結婚相手紹介サービス(2ヶ月を超えるもの)
    • 8日以内であればクーリング・オフができます。役務が既に提供されている場合でも、消費者はその対価を支払う必要はありません。
  1. 業務提供誘引販売取引
    • 物品の販売又は役務の提供(そのあっせんを含む)の事業であって、業務提供利益が得られると相手方を誘引し、その者と特定負担を伴う取引をするものが該当します。例として次のようなものです。
      • 販売されるパソコンとコンピューターソフトを使用して行うホームページ作成の在宅ワーク
      • 販売される着物を着用して展示会で接客を行う仕事
      • 販売される健康寝具を使用した感想を提供するモニター業務
      • 購入したチラシを配布する仕事
      • ワープロ研修という役務の提供を受けて修得した技能を利用して行うワープロ入力の在宅ワーク
    • 20日以内であればクーリング・オフができます。
  1. 訪問購入
    • とは、購入業者(※1)が、店舗等以外の場所(例えば、消費者の自宅等)で契約を締結等して行う物品(※2)の購入のことをいいます。
    • 8日以内であればクーリング・オフができます。

クーリング・オフの通知の方法

クーリング・オフが適用される場面で、具体的な通知方法をご紹介します。

  • 契約書面を受け取った日を含めて8日間(又は20日間)以内にはがきなど書面で通知する
  • 証拠を残すため、はがきの両面をコピーし、控えとして保管
  • クレジット契約をしている場合は、クレジット会社へも同時に通知する
  • 郵便局で「特定記録郵便」か「簡易書留」にして送付する

また、2021年の特商法改正によって、消費者からのクーリング・オフの通知は電磁的方法(電子メールの送付など)によって行えるようになりました。

電子メールのほか、USBメモリ等の記録媒体や、販売業者等が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等により通知を行う場合が該当します。

クーリング・オフの通知は、期間内に発信すればよく、期間内に事業者に届く必要はありません。

クーリング・オフをすると、事業者に支払ったお金は返金され、消費者は手元にある商品を着払いで返品すればよいのです。

クーリング・オフの起算日に注意

クーリング・オフの起算日ですが、申込書面又は契約書面を受け取った日です。

契約書面には、記載すべき14の項目が法律で定められています。そのほか、消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、クーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字及び数字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

記載事項に不備がある場合、契約書面とはなりません。あらためて、不備のない書面を受け取った日から起算することになります。また、特定商取引に関する法律で定められている禁止事項である「クーリング・オフ妨害」があった場合も同様です。

あらためて書面が交付されない場合は、クーリング・オフ期間が始まっていないことになり、いつでもクーリング・オフできることになります。

タイトルとURLをコピーしました