債務整理の基礎知識 “過払金”とは?

ツナグ相続

相続とはだいぶ分野が異なりますが、司法書士として知っておかなければならない債務整理についてのお話になります。最近は相談件数が減っているとはいえ、まだ債務整理を専門に扱っている司法書士事務所もありますし、基本的なところは押さえておきたいというのが目的です。

方法は主に4種類 本人の支払能力の程度による

一言で債務整理といっても具体的に何をするのかですが、方法は主に4種類になります。

今後債務を完済できる見込みがあれば任意整理または特定調停、支払不能のおそれがある場合には民事再生、支払不能であれば破産、となります。

任意整理は原則としてすべての債務を支払うことを目標とします。債権者との交渉による任意の和解、という解決方法ですので、分割弁済の期間や回数、弁済額の交渉をしたり、一括弁済する代わりに元本が減額される可能性もあります。

特定調停は任意整理と同じくすべての債務を支払うことを目標としますが、裁判所へ申立てることで、調停委員が当事者の話合いをまとめてくれます。裁判所が関与することで、債権者へ取引開示請求や文書提出命令などを発令でき、債務整理に協力的でない債権者に対して強制力をもって臨むことができます。

民事再生(個人)ですが、支払不能に陥るおそれがあるものの、継続的な収入見込みがある者に対して破産せずに債務を一部免除し、原則3年間で分割返済を終えることで再生を図るものです。特徴的なのは、債務が住宅ローンの場合、特例により住宅を競売で失うことなく手続きができる点です。

破産(個人)ですが、通常すべての債務の免責を受けます。当然ながら、保有資産を換価して配当、清算します。破産宣告を受けると一部の職業は欠格事由となります。代償は重いですが、すべての借金がなくなるので生活再建には最適な手段ともいえます。

グレーゾーン金利とは何か

ところで、お昼の番組で“過払金返金”を唱う司法書士事務所のCMを目にしますよね。一時期より減ったものの、いまだに過払金返還請求案件が多いことを窺わせます。

過払金とは何たるやを理解するには、かつて存在した「グレーゾーン金利」について知らなければなりません。

「グレーゾーン金利」とは、利息制限法出資法の上限金利の間の金利をいいます。
金利の上限を定めたこの2つの法律のうち、利息制限法では金利の上限を15~20%と定めています。
他方、出資法は上限を超えた場合に刑事罰の対象となる金利の上限を29.2%と定めていました。
そのため、利息制限法の上限を超えていても、出資法の上限を超えなければ刑事罰は科せられず、「灰色の金利」が存在していました。これが「グレーゾーン金利」です。
長年、貸金業者は、この「グレーゾーン金利」による金利を設定し、違法な金利を取っていたわけです。

しかし、2010年6月に改正貸金業法が完全施行され、出資法の上限金利を利息制限法の上限金利である20%まで引き下げることが決定しました。出資法と利息制限法の上限金利の間の金利での貸付は行政処分の対象となり、現在ではグレーゾーン金利は撤廃されています。
このグレーゾーン金利で借入を行い、支払すぎていた金利を、「過払金」として返還請求することができることになります。

過払金返還請求は別途並行して行う

過払金は、利息制限法に基づいて引直し計算=つまり適法な金利に再計算して算出します。利息制限法で定められている金利の上限は次のとおりです。

  • 元本10万円未満:利息年20%
  • 元本10万円以上100万円未満:利息年18%
  • 元本100万円以上:利息年15%

遅延損害金についても利息の制限が1.46倍までに制限されているので

  • 元本10万円未満:利息年29.2%
  • 元本10万円以上100万円未満:利息年26.28%
  • 元本100万円以上:利息年21.9%

となります。

上記を超える部分は違法となり、過払金として返還請求することになります。

手続き方法としては、まずは任意交渉をすることも可能ではありますが、多くの場合は訴訟によることになります。訴訟のなかで、判決によらずに和解により解決されることもあります。あらかじめ、和解するならこのライン、と基準を打ち合わせておくことも重要です。

訴えの提起から2〜3ヶ月、場合により半年程度要することがあります。

司法書士は、簡易裁判所においてのみ代理権を有します。簡易裁判所では、訴訟の目的となる価額(訴額)が140万円以下の事件のみ扱うことができるとされていますので、140万円を超える債務については司法書士の代理権の範囲外となり、弁護士に依頼しなければなりません。

今回はここまでにして、次回は過払金と同じくらい重要な「時効消滅」についてお話します。

タイトルとURLをコピーしました