任意後見と法定後見の違い

ツナグ相続

前回のブログ更新から半月も空いてしまいました(反省。。)。

持ち前の貧血がちょっとしんどい時期があったり、寒さから逃れようと南房総へ急遽泊まりの旅行をしたり、身体のメンテナンスに時間を要してしまいました。気候も変わりやすく、寒暖差も激しくて、体調に波が来やすい時期です。無理せず、ゆっくりのんびりいきましょう。

さて、今回から後見についてお話することにします。そもそも後見とは、民法で定められた制度であり、制限行為能力者の保護のために、法律行為・事実行為両面において、後見人がサポートを行う制度です。

やはり、背景にあるのは超高齢社会において認知症の不安を抱える方、そのご家族の多さ、です。

認知症の有病率は年齢とともに急峻に高まることが知られています。 現在、65歳以上の約16%が認知症であると推計されていますが、80歳代の後半であれば男性の35%、女性の44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症であることが明らかにされています。

任意後見と法定後見の違いを知る

後見制度には2通りあります。法定後見制度と任意後見制度です。その違いをよく理解することが大切です。大まかな制度趣旨としては以下のとおりです。

任意後見制度は元気なうちに自分で内容を決めておける

本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務(本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務)の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度

法定後見制度は判断能力がなくなったあと国が関与する

本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度

具体的な手続きをみていきましょう。

任意後見制度は公正証書で契約する

  1. 本人と任意後見人となる方との間で、本人の生活、療養看護及び財産管理に関する事務について任意後見人に代理権を与える内容の契約(任意後見契約)を締結
    →この契約は、公証人が作成する公正証書により締結することが必要
  2. 本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の申立て

法定後見制度は裁判所に申立てる

家庭裁判所に後見等の開始の申立てを行う必要がある

いずれにしても、後見制度の効果が発生するのは判断能力を失ったあとになりますが、あらかじめ内容を自分で決めておけるのか、そうでないのかが大きな違いです。

では、選任された後見人はどのような権限を持つのでしょうか。

任意後見人は代理権のみ

任意後見契約で定めた範囲内で代理することができるが、本人が締結した契約を取り消すことはできない。

法定後見人は代理権、取消権がある

制度に応じて、一定の範囲内で代理したり、本人が締結した契約を取り消すことができる。

後見人にできることは基本的に財産の維持管理

では、後見人が選任されたとして、どのようなことができるのでしょうか。具体的にみていきます。

①入出金の管理

具体的には、通帳記入、現金出納帳の記録、領収書の保管、預金の管理に加え、年金の管理や生活保護の申請、保険金の受領も可能です。その他には不動産収入の管理、介護・医療の契約・支払い、家賃・光熱費の支払い医療・介護などの減免の手続き後見事務の費用の清算があります。

②資産管理

具体的には不動産の管理、有価証券・金融商品などの管理があります。国民年金・厚生年金、医療保険、介護保険の支払いや、所得税や住民税の確定申告・納付も行うことができます。

ただし、あくまで本人の利益のための財産の維持管理なので、投資などの資産運用などはできません。

後見人は身元保証人ではない

続いて、後見人ができないことをみていきます。あくまで法律行為の代理人であり、身の回りのお世話などは業務範囲ではありません。

①日用品の買い物の同意や取り消し

日用品の購入金額はそれほど高額ではないので、被後見人自身で行うことができます。被後見人の財産に重大な影響を及ぼさないためです。

②被後見人の生活や健康管理のための労務提供

つまり、被後見人の身の回りのお世話、介護はできません。食事を作ったり、掃除をしたり、話し相手になることなどは業務範囲外なのです。後見人ができるのはあくまで法律行為のみだからです。介護保険サービスや障害福祉サービスをうまく利用することが大切です。

③身分行為、一身専属的な行為

例えば、養子・婚姻・離婚・子の認知などに関する届出や遺言書の作成の代理はできません。

④被後見人の引受人や保証人になること

そのようなことを行うと家庭裁判所から解任される可能性があるので注意が必要です。地域の民生委員、ケアマネージャー、近隣の住民の方に協力を仰ぎ、支援をしてもらうことも大切です。

⑤医療行為の同意

手術をする、しないの判断はあくまで本人しかできません。

⑥被後見人の居住する不動産についての処分

成年後見人は家庭裁判所に居住用不動産処分許可の申立をして許可を得る必要があります。

⑦成年後見人と被後見人との利益が衝突する行為

例えば、両者が同じ相続についての相続人となった場合があります。 このような場合には、特別代理人を家庭裁判所に申立てることになります。

次回は成年後見制度について詳しくみていきます。

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