ご家族が亡くなられたらやるべきこと

ツナグ相続

いざ、相続が始まる場面を想像してみましょう。

大切なご家族を失った悲しみに暮れる間もなく、各種手続きが大変で・・という話はよく耳にします。また、遠方にお住まいの場合や、平日に役所へ出向くことができないなど、なかなか思うように進まないケースもあるでしょう。

いつかそのときが来ると覚悟はしていても、その場面は突然訪れるものです。いざというときに慌てないために、「やるべきリスト」を確認しておくとよいでしょう。

こんなに多い「すぐに」やるべきこと

亡くなられてから速やかにやるべきこととして、主に以下の手続きがあります。個人のケースによってはさらに増えることもあります。役所関係、年金関係が主になります。

7日以内
・死亡届の提出
・埋火葬許可証交付申請

ただちに
・健康保険証の返還
・厚生年金の手続き
・国民年金加入状況変更の手続き(配偶者が故人の扶養になっていた場合)
・健康保険の変更・加入(故人の扶養になっていた場合)

14日以内
・世帯主変更届

すみやかに
・電気、ガス、水道、インターネットの契約者名義変更
・携帯電話、クレジットカードの解約
・運転免許証、パスポートの返納

1か月以内
・雇用保険受給資格者証の返還

2年で時効
・埋葬費支給申請
・葬祭費支給申請

3年で時効
・死亡保険金(入院保険金)の請求

5年で時効
・遺族厚生年金の請求

私の住まいの地域である町田市のHPにはこのようなチェックリストが掲載されています。窓口の連絡先も記載されています。ぜひ、お住まいの地域のHPをチェックしてみてください。

町田市HP 大切な方を亡くされた時の主な手続きのチェックリスト(市役所関係の手続き) 

預貯金、株式、不動産の相続手続き

役所関係の手続きを終えたら、いよいよ預貯金、株式、不動産の相続手続きを始めることになります。

一つ、覚えておいていただきたいのは、そんなに慌てる必要はない、ということ。

亡くなった直後に司法書士事務所へお問い合わせいただく方もときどきいらっしゃるのですが、相続手続きに必要となる「住民票の除票」「戸籍の除籍謄本」は死亡届の提出から1週間ほど経過しないと取得できません。

また、2018年の民法改正により「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が創設されたことで、遺産分割が終了する前であっても、各相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払いなどのためにお金が必要になった場合に、相続預金の払戻しが受けられるようになりました。

払戻しを受けられる金額には上限があります。また、相続人の相続分に応じて決められます。

単独で払戻しを受けられる金額 = 相続開始時の預金額(口座・明細ごと) × 1/3 × 
                 払戻しを求める相続人の法定相続分

【払戻可能金額の事例(払戻しを希望するご相続人の法定相続分が1/2の場合)】
(例)相続開始時の預金残高が、普通預金600万円、定期預金540万円の場合
払戻可能金額は、
600万円×1/3×1/2=100万円
540万円×1/3×1/2=90万円
計190万円のうち、150万円(150万円が上限のため)

三井住友銀行HPより

便利になった戸籍謄本の取得

この制度を利用するにあたっては、下記のような書類が必要となります。(金融機関により若干の差異があるようです)

  • 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または 全部事項証明書
  • 預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書

これらの書類は不動産や株式の相続手続きにも共通して使用できます。

2024年3月1日から始まった、「戸籍証明書等の広域交付」制度により、戸籍事務内連携システムを活用して、全国の市区町村間で戸籍証明書の情報のやり取りができるようになり、全国どこの市区町村の窓口でも本籍地の戸籍証明書を請求できるようになりました。また、本籍地以外の戸籍証明書を最寄りの市区町村窓口で請求できるようになりました。戸籍謄本の取得が、今までよりも格段に便利になったわけです。

ただし、すべての戸籍請求が対象となっているわけではありません。下記の3点に注意が必要です。

戸籍の広域交付制度利用して請求できるのは、本人、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られています。つまり、兄弟姉妹、またはおじやおばなどの戸籍謄本を請求することはできません。

郵送請求の方法を利用して戸籍の広域交付制度を利用することはできません。この制度を利用する場合には、必ず請求者本人が市区町村役場に直接出向く必要があります。

また、通常の手続きでは、委任状を用意して第三者に請求を委託することもできますが、戸籍の広域交付制度を利用する場合は、請求者本人が窓口に出向く必要があり委任状による請求はできません。

そのほか、以下で説明する戸籍関連書類については広域交付制度を利用して請求することはできません。戸籍抄本や除籍抄本、戸籍の附票、コンピューター化されていない戸籍に関しては、従来どおり、別途本籍地を管轄する市区町村役場に郵送または出向いて請求する必要があります。

相続税の申告には期限がある

預貯金、株式、不動産の相続手続きを無事に終えたら、相続税の申告をすることになります。

相続税の申告書の提出期限(以下「申告期限」といいます。)は、相続の開始があったことを知った
日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月目の日です。ですので、ここまでにひととおりの相続手続きを終えておかなければなりません。

相続税の申告が必要になるケースはさほど多くない

被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した各人の課税価格の合計額
が、遺産に係る基礎控除額を超える場合、その財産を取得した人は、相続税の申告をする必要があります。したがって、課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額以下である場合には、相続税の申告をする必要はありません。


遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

つまり、法定相続人が3人いた場合、3,000万円+600万円×3=4,800万円 を超える相続財産があった場合のみ、相続税の申告が必要となります。

また、相続人が配偶者の場合、未成年者の場合、障がい者の場合などはさらに控除を受けることができます。

不動産については次のように課税評価します。

土地については、「路線価図」や「評価倍率表」により評価します。また、家屋については、固定資産税評価額により評価します。なお、「路線価図」や「評価倍率表」は、国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」【https://www.rosenka.nta.go.jp】で確認することができます。

路線価にしても固定資産税評価額にしても、市場価格とは大幅に異なります。相続税の検討がつかなくて不安だと思われる方は、一度確認しておかれると良いでしょう。

タイトルとURLをコピーしました